Gardens for Aliens

嫌われ者のフィロソフィ

橙コンプレックス

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Rhinogobius sp. 国内移入?, 茨城県南部産

 なんども編集を繰り返し、ずっと下書き状態だったのをやっと公開・・・なんか文章が回りくどくなってるのは・・・お察しください。

 

 日本産ヨシノボリ類は分類が混乱しており、長らく学名が決まっていない(コンセンサスが得られていない?)個体群がたくさんあります。ヨシノボリ類の中で、尾鰭の付け根がオレンジ色になる個体群は、' トウヨシノボリ  ( Rhinogobius sp. OR ) ' と呼ばれていましたが、その中にもさらにいくつかの ' 型 ' が存在することが知られていました。で、2013年に出版された「日本産魚類検索 第三版」では、いくつかの型が独立種とされました。この図鑑についてはいろいろ言われているようですが、私は専門家ではないので、信憑性云々についてはここでは触れないことにします。

 

 さて、上の写真の個体(オス)ですが、形態形質から上記の図鑑で検索すると、クロダハゼ ( R. kurodai ) になるかなと思います。もっとも、腹鰭第5軟条とか腹鰭前方鱗とか、生きてる状態で確認するのはほぼ無理なので、なんとなく当てはまりそうってだけですが。

 

 ' R. kurodai ' という学名は、トウヨシノボリの偽橙色型と呼ばれた標本が、それ以前に記載された ' Ctenogobius kurodai ' の標本とよく合致するということで、偽橙色型の有効な学名として提唱されているものです ( 鈴木・陳 2011 )。トウヨシノボリには ' 橙色型 ' というのもあり、「魚類検索第三版」では琵琶湖産の橙色型に対し、' オウミヨシノボリ ' の和名を付しています。

 外来生物データベースによると、琵琶湖産の 'トウヨシノボリ ' は、アユなどの種苗に混じって各地に放流されているそうで(このデータベースの 'トウヨシノボリ ' がどの範囲までを指すのかが謎ですが)、こういった国内移入による種間交雑個体と思われるものが見つかることもあるようです ( 鈴木・他 2010 )。

 

 写真の個体を捕まえた小川では、オスの第1背鰭の長さや頬の小斑点の有無等に個体差があり、ここでも在来の個体群と移入個体群とが交雑している可能性があります。実は、第1背鰭が伸長する・頬に赤色小斑点がある等の特徴を持った、オウミっぽい個体も捕まえて、同じ水槽で飼育しているんですが、常に奥の方に引きこもっているため、写真が撮れませんでした。オスを同じ水槽で複数飼育していると、一番強いオスが目立つ場所にいつもいて、その他は物陰に隠れてしまいます・・・

 

参考文献

中坊徹次編, 2013, 日本産魚類検索 全種の同定 第三版, pp.1454-1462, 2141-2143, 東海大学出版会.

瀬能宏編・鈴木寿之・渋川浩一著・矢野維幾, 2004, 決定版日本のハゼ, pp.445-461, 平凡社.

鈴木寿之・向井貴彦・吉郷英範・大迫尚晴・鄭 達壽, 2010, トウヨシノボリ縞鰭型の再定義と新標準和名の提唱, 大阪市立自然史博物館研究報告 64: 1-14.

鈴木寿之・陳 義雄, 2011, 田中茂穂博士により記載されたヨシノボリ属3種, 大阪市立自然史博物館研究報告 65: 9-24.

(独)国立環境研究所, " トウヨシノボリ ", 侵入生物データベース ,  http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/50930.html , 参照: 2014 - 9 - 22.