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Gardens for Aliens

嫌われ者のフィロソフィ

「オオキンケイギク」とされる植物の形態的特徴

 かなり前ですが、うちの近所で見られる「オオキンケイギク」は、環境省の同定マニュアルに従うとオオキンケイギク ( Coreopsis lanceolata ) ではないかも、てなことを書きました。近所の「オオキンケイギク」は、地上茎の上の方まで葉が付いており、ホソバハルシャギク ( C. grandiflora ) の方が近いように思えたからです。そこで、3か所で「オオキンケイギク」と思われる植物の形態形質を調べてみました。ちなみに、調査したのは2015年の5月~6月。書こう書こうと思いつつ、1年経ってしまった・・・

 

 調査地点は、岐阜県東部で2か所と、愛知県西部で1か所。それぞれ、St. 1 (岐阜県東部・河原)、St. 2 (岐阜県東部・幹線道路沿い)、St. 3 (愛知県西部・川沿いの土手)としました。今回は全部一人でやるっていうこともあったので、オオキンケイギクとホソバハルシャギクを識別することに重点を置き、Strother ( 2006 ) を参考に、調べる形態形質を2つに絞りました。それは、1. 地上茎の高さごとの葉の数、2. 地上茎の節数です。計測は、すでに開花した株の、最も大きい地上茎を1本選んで行いました。また、同じ株の地上茎を選ばないよう、互いに1 m 以上離れた株を用いました。

 

 まずは、葉の数の結果。

地上茎の高さごとの葉の割合

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左が地上茎の 1 / 2 の高さより下にあった葉の割合、右が上にあった葉の割合。ブラックがSt. 1、ダークグレーがSt. 2、ライトグレーがSt. 3。エラーバーは標準偏差です。縦軸は、全体の何%の葉がどの高さに付いていたかを示しています。この割合は、単純に葉の数から算出したものです(重量とかではなく)。それぞれn = 100。

 日本語が下手ですが、こうやって半分より下側の葉と上側の葉の枚数を数えたってことです。

f:id:sauerklee:20160529231128j:plain 

 

St. 2 とSt. 3 では、さらに細かく分けて数えてみました。

f:id:sauerklee:20160526211651j:plain

ダークグレーがSt. 2、ライトグレーがSt. 3 です。左から、1 / 3より下、1 / 3から1 / 2、1 / 2から2 / 3、2 / 3より上の葉数の割合を示しています。

 こういうことね。

f:id:sauerklee:20160529231203j:plain

 

 3つの調査地点の植物は、いずれもほとんど(平均で約67 ~ 80 % )の葉が、地上茎の高さの半分より下側にあり、さらにSt. 2の結果からは、1 / 3より下側に多い(平均で約64 % )ことが分かります。St. 3では高さごとの割合の差が小さく、ばらつきも大きくなっています。これは、St. 3では植物の密度が高く、下層の葉が落ちていた株が多かったことが原因だと考えられます。

 

次に、地上茎の節数。

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上と同じく、エラーバーは標準偏差、n = 100。

 3地点とも、節数の平均が、約6でした。一応、分散分析の結果、St. 3 だけ他の2箇所より有意差がありましたが ( P < 0.05 )、グラフ上ではほとんど同じに見えますね・・・。Strother ( 2006 ) に従ってオオキンケイギク ( C. lanceolata ) とホソバハルシャギク ( C. grandiflora ) の特徴を比較すると、

葉が付く高さ C. lanceolata: 1/4 - 1/3 ( -1/2 )

       C. grandiflora: 2/3 - 7/8

地上茎の節数 C. lanceolata: 1 - 3 ( -5+ )

       C. grandiflora: 6 - 10+

葉の位置については、私が調査した植物はオオキンケイギクに近い傾向がありました。地上茎の節数から見ると、オオキンケイギクの特徴と異なるように思えますが、オオキンケイギクの変種、var. villosa は節数が5より多くなるらしく、今回の結果と合致しています。なので、飽くまで地上茎の特徴から判断した場合ですが、3つの調査地点の植物は、Coreopsis lanceolata var. villosa の可能性が高いと思います。

 

 環境省の同定マニュアルに掲載されている検索表の一つでは、オオキンケイギクは「茎葉は1~2対」(茎葉は1節に1対出るので、節数と対応している)とあります。しかし、私が調査した植物は、多くがこれに合致しませんでした。もし、日本国内の他のオオキンケイギクも同じ傾向があれば、この検索表によって「オオキンケイギクではない」と判断される可能性があります。同マニュアル中で「ホソバハルシャギク」とされている写真も、私が調査していた植物によく似ています。

 しかし、日本国内で野生化している「オオキンケイギク」が、全て C. lanceolata だとは言えません。私はこの調査で何百株と見てきて、かなり形態差があると感じました。今回「オオキンケイギク」として計測した株の中に、他種や交雑種が混ざっていた可能性は十分あります。でもまあ、全体的に上記のような「傾向」があったのは事実なので、このブログでは当分オオキンケイギクの変種 ( C. lanceolata var. villosa ) として扱うことにします。

 

参考文献

Strother, J. L. 2006, Coreopsis. In: Flora of North America Editorial Committee, eds. 1993+. Flora of North America North Mexico. 19+ vols. New York and Oxford. Vol. 21, pp. 185-197.

環境省, " 特定外来生物同定マニュアル(植物)詳細PDF版 " 外来生物法,  http://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/manual/shokubutsu2.pdf , 参照 2016-5-30.